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高尾山のスタンプラリーと、だらけきった景信山
投稿日
2022/05/06
現在無職である。
無収入である。
つまり毎日、確実に金が減っていく。
そのことに恐怖を覚えている。
そんな中、健康不安もある。
ガンになって死ぬのではないかと、心配になる。
四十八歳。
若くしてガンになって死ぬなんてことは、そんなに珍しい話ではない。
健康不安もある。
私は現在、充分に健康であると、言い切れない。
読書したり、映画を観たり、ニュースを見たりしても、60歳で死んだとか、54歳で死んだとか、そのくらいの年齢で死んだ人のニュースが、やたらと耳に入ってくる。
70歳くらいまでは確実に生きれるだろうと楽観的に考えていたが、不治の病というものに突然見舞われるということは、決して、そんなに珍しい話ではない。
それを考えると人間、いつ死んでもおかしくないのだということを考えてしまい、とても不安になってしまう。
どうも、ナーバスになりすぎてしまっているようだ。
先日、古本を買って、二千五百円を払ったが、その本が少しだけ、カビがついているような、そんな汚れがあったことが、ひどく気になっている。
古本なので、多少汚れているのは仕方がないのだが、どうもそのカビのような汚れが気になり、その本を押し入れにいれてしまうと、他の本も、全部カビだらけになってしまうのでないかという心配に見舞われてしまい、そもそも、今の無職、無収入の状態で、二千五百円も使って古本を買うとは、あまりにも無駄使いをしすぎなのではないと思って、そのことが、一日たっても、二日たっても、その気かがりが、消えないのである。
購入した古本のことを、四六時中、考えてしまっている。
そして昨日、寝てるときも、とある健康不安を感じ、どうにもいたたまれない気持ちになった。
これはもしかしたら、カフェインを絶ってるからかもしれない。
私は重度のカフェイン中毒であるが、最近、お茶を飲んでいない。
そのため、カフェイン中毒の禁断症状が出ているのかもしれない。
それで何から何まで不安になるという、病的な症状が出てしまっているのかもしれない。
となると、ここは我慢のしどころだ。
このカフェイン中毒の禁断症状が終われば、体調は改善するだろう。
今はカフェイン中毒の禁断症状が出てしまっていて、このような、重度にナーバスになってしまっているという症状が、出てしまっているのかもしれない。
そんなこんな思いながら、朝起きて、朝といっても、もう九時半だが、ひとまず起きてから、やはり、こんな状態であるならば、登山に行くべきであろう。
そのように考え、自然と、登山に行くことになった。
登山に行く、用事もあるのだ。
というのは、私は先日、高尾山のスタンプラリーをしたのだけど、まだ二つ、スタンプが残っているのである。
その二つは、「景信山」と、「陣馬高原下」である。
特筆すべき点として、なぜか陣馬山の山頂には、スタンプは無い。
そこがまず、ポイントだ。
それが今日の登山のコースに、大きな影響を及ぼした。
私はスタンプラリーをして、スタンプ十個を、何がなんでも集めたい。
しかし陣馬山の山頂にはスタンプはないので、陣馬山の山頂には登る必要がない。
それがまず、一つのポイントであった。
まず今日は、JR高尾駅まで移動した。
途中、立川駅のコンビニで、カマンベールチーズパンを、三つ購入した。
それと、ついつい温かいお茶も、購入してしまった。
そしてそれを飲み、カフェイン禁止というルールを、あっけなく破ってしまった。
なぜなのか。
そう、そういえば、派遣会社からメールが来て、紹介された案件が結構良さそうで、ちょっと色々検討していたら、いつの間にか、軽々と、温かいお茶を購入してしまっていた。
そうやはり私は、働かなければいけないのである。
働かなければ、この不安は消えないのである。
そのようにして高尾駅に到着して、陣馬高原下に行くバスを調べてみたが、どうやらそのバスは、一時間くらい来ないようだった。
だから仕方なく、私はまず、小仏ゆきのバスに乗った。
そして、小仏バス停まで移動した。
それからまず、景信山に登った。
山の中に入ってしばらく歩いていると、明確に、「登山はなんと健康に良いのだろうか」と、感じる瞬間が、訪れた。
なぜだろう。
空気が美味しいからか。
あるいは、緑が多いからか。
小鳥がないているからか。
よくわからないが、登山をしていて、明確に、「いやー登山、やばいね」と、私は思った。
その意味は、「とんでもなく健康にいいぞ、これは」、そのように、確かに感じてしまったのである。
そんなこんな歩きながら、まず、景信山に到着した。
そして、スタンプを押した。
スタンプは、アサギマダラだった。
これは、ちょうちょである。
ひらひらと飛ぶくせに、東京から沖縄まで飛んだりするらしい。
そんな行動範囲の広いちょうちょが確か、アサギマダラだったように、記憶している。
アサギマダラの体は白と黒で、体つきもスマートで、見た目もとても美しいちょうちょである。
だから、はえあるスタンプラリーのスタンプの一員に、選ばれたのであろう。
景信山の山頂では、「景信茶屋 青木」という茶屋だけ、営業していた。
なめこ汁とか、なめこうどんとか、おでんとか、色々売っていて、何か買って食おうかなどと思ったりしたが、結局何も買わずに、その場を後にした。
景信山から陣馬山までの道のり、どうやら180分もかかるらしい。
つまり、三時間もかかる。
そのときすでに十三時だったので、陣馬山の山頂に到着するのは十六時くらいということになる。
それを考えると、ぼやぼやしてはいられない。
私は早速、陣馬山に向かって、歩き出す。
でもどうやら、ショートカットの道があるらしい。
ショートカットできるようであれば、ショートカットしたほうがいい。
なぜなら別に今日は、陣馬山の山頂まで、行く必要はないから。
陣馬山の山頂で、「ゆずシャーベット」を食べたくてたまらなかったが、しかし、景信山から三時間もかかると言われると、可能であればショートカットして、スタンプがある陣馬高原下まで行きたいと、そのように思っていた。
まあなにはともあれば、まずは堂所山にいかねばならない。
ショートカットして陣馬高原下まで行く道は、どうやら堂所山付近にあるようである。
しかし、なんとも登山をする者として情けないことに、私は今日、地図を持ってきていない。
そして、ヘッドライトも持ってきていない。
それは少し、不安である。
登山をするのに、ヘッドライトを持ってこないとは。
地図を持ってこないとは。
とんでもない失態だ。
地図をもたずに、一度も歩いたことがない道を歩いて、果たして大丈夫か。
そんなことをすると、迷ってしまうのではないか。
迷って夜になった場合、ヘッドライトがないと、とても困る。
まあとにかく、地図アプリの「ジオグラフィカ」で、登山道を確認しながら、進んでいくしかあるまい。
そのようにして、歩いていく。
しかしこの、景信山から陣馬山までの三時間の道のりというのも、なかなか渋い道のりである。
歩いていて、とても気持ちの良い道であると言って、良いだろう。
今回は堂所山に登っていく道は進まず、左の道を進み、堂所山は通らなかった。
堂所山をすぎてから、「底沢峠」というところに出て、そこから右に下っていく道があった。
その道が、道標によると、「陣馬高原下まで、2・8キロ」とのことであった。
そこから陣馬山山頂までは、2・5キロくらいであったようだ。
で、陣馬山山頂から、陣馬高原下までは、確か一時間くらいは歩く必要があったような気がする。
つまりやはり、そこから右に下って行ったほうが、早く陣馬高原下に到着できるのは、間違いない。
今日は陣馬山の山頂で「ゆずシャーベット」を食べたいところだったが、しかし今回は別に、陣馬山には用がなく、用があるのは、スタンプラリーだけである。
だから、より簡単に、より楽に、スタンプを獲得する道を選んだというわけだ。
そこから下ってしばらくすると、沢が出てきた。
私は早速沢に降り、顔を洗って、そして沢の水を、ガブガブ飲んだ。
そして元気百倍、歩いていく。
歩いていると、トラックで作業している人とか、出てきた。
そのあたりはどうやら、釣り堀とか、養魚とか、キャンプ場とかあるらしい。
ああもうここまでくると、登山は終わり、このあたりはもう、下界だなあと、そのように思った。
そして、ぼけーっとしながら歩き続けていると、とうとう、陣馬高原下にある、「陣馬そば 山下屋」という店に到着した。
その店は、店舗改装中のため、休業中のようだった。
通ならば、そこでおそばの一杯も、すすってかえるに違いない。
私の知り合いの登山スペシャリストは、このお店の人と仲が良いらしく、ここにくるたびに店に入って、楽しく世間話して、美味しいお蕎麦をすすってかえるらしい。
スタンプは、その店の前に置かれていた。
そのスタンプは、「クマバチ」だった。
ああそうだ。
底沢峠から陣馬高原下まで降りてくる道のりで、巨大なスズメバチに出くわした。
そのスズメバチは、今までみたどのスズメバチよりも、とんでもなく巨大だった。
あわわわわ、と言いながら、私は逃げ回ったが、巨大スズメバチは近づいてくる。
わわわわわ、と言いながら、私は首をすくめ、両手で頭を守りながら、なるべく低い姿勢で、なんとかその巨大スズメバチをやり過ごそうとした。
幸いスズメバチは、どこかに行ってくれた。
よかった。
これが秋だったら、こうはいかなかったかもしれない。
スズメバチは秋になると、冬に備え、スズメバチ家族のために食料を溜め込むために、ことのほか攻撃的になるらしい。
だから秋だったら攻撃的になっているスズメバチは、問答無用で私を刺してきたかもしれない。
しっぽの毒針を私の皮膚に差し込み、毒を私の体に流し込み、私はそれで死亡していたかもしれない。
山の中で、クマに襲われて死ぬ確率よりも、スズメバチに刺されて死ぬ確率のほうが、はるかに高いらしい。
たいていハチに刺されると、ショック死してしまったり、するらしい。
体質にもよるみたいで、ハチの毒に弱い体質の人であれば、それで死んでしまったりもするらしい。
と、うろ覚えの知識を披露させていただいた。
間違っていたら、すまない。
あの巨大スズメバチが、スタンプに描かれてた「クマバチ」である可能性は、非常に高い。
なぜなら、あんなにでかいスズメバチ、本当に初めてみたからだ。
あれはあまりにも巨大すぎた。
それと道中、ヘビもみた。
まあヘビのほうは、かわいいものだった。
何も害はなかった。
やはりその道は、比較的、人の通りが少ないのだと思う。
だからヘビとか、巨大スズメバチとか、出てきたのかもしれない。
そういう人の通りが少ない道は、クマが出てきたって、おかしくない。
高尾山にはクマはいないとされているが、しかしクマの目撃情報の看板は立っていた。
だからクマはもしかしたら、どこかにいるのかもしれない。
陣馬高原下で、バスを50分くらい待ったと思う。
私はついつい、自動販売機で、「抹茶ラテ」という飲料を、貪り飲んでしまった。
これはカフェイン、入っているのだろうか。
「こがし麦茶」とやらが、カフェインが入っていないと書いてあったので、その麦茶にしようかとも思ったが、抹茶ラテのほうが美味しいそうだったので、今回は抹茶ラテを飲ませていただいた。
トイレは、バス停の近くにあった。
私はネットで求職活動をしながら、バスを待った。
そしてバスが来て、バスに乗った。
バスはすぐに、満員になった。
陣馬高原下から、高尾駅までは、けっこう時間がかかった。
バスの中で、十代後半くらい男女が話をしていた。
「ぜんぜん行きたく会社に採用されちゃったよ、いやだなあ」
「ぜいたく言うなよお」
などと、話していた。
その女の子のほうは、バイクに乗りたいらしいが、親がそれを許さないらしい。
しかし一人暮らしをしはじめたら、親に内緒でバイクの免許をとるつもりらしいが、「ばれないかなー」と、とても心配していた。
それに対して男のほうは、「ばれっこないよ。だいじょうぶだよ」などと、言っていた。
その女の子は、行きたくない会社への入社が決まったらしい。
で、一人暮らしをするらしいが、最初の給料が出るまでのお金も、親は払ってくれないらしく、それはなんとか自分でバイトして、その金を稼がなければいけないらしかった。
それプラス、バイクの免許をとったり、バイクを買ったりすると、三十万くらいかかるらしく、「三十万なんて大金、絶対ムリだよ」などと、悲しそうに言っていた。
悲しそうだが、その二人はとても元気だった。
その日の、この後、みんなで集まって、カラオケにいくらしい。
「あんたもいくでしょ?」と男は言われたが、「いやおれはちょっと・・・」などと口ごもっていた。
それでなんか、行けない理由を、あれこれ言っていたが、「でも別に用事はないんでしょ。だったら、カラオケ行った方が良くない?」と言われ、説得される寸前になっていた。
しかし、その年代の男女というものは、なかなか微笑ましいものである。
金持ってるとか、持ってないとか、関係ない。
金持ってない男には興味ないとか、婚活女子然とした発言は、一切ない。
お互いに若いので、金を持っていないのが当たり前で、まだまだ赤ちゃんに毛が生えたような感じで、まだまだ親から守ってもらっている然とした、ひよこじみた二人の、微笑ましい会話であった。
しかしあの元気。
つらいつらいと言いながらの、あの元気はつらつっぷり。
あの早口。
バスは、高尾駅に到着した。
駅から電車で帰宅中も、私はずっとネットで求職活動をしていた。
登山をして、少し気分が前向きになってきた。
仕事を頑張ればいい。
そうすれば、心配することは何もない。
そんなふうな、気分になった。
気持ちが前向きになれたのである。
最寄駅に到着して、スーパーで、百グラム47円の鳥の手羽元のパックと、タラコと、片栗粉を買ってきた。
そして家に帰ってきて、登山中は食べなかったカマンベールチーズパン三つを、貪り食った。
そして、登山中は飲まなかったペットボトルの水道水を、がぶ飲みした。
まあしかし、とにかく無職になって、無収入になって、とにかく金を使わないこと、それだけに集中していたが、それでもやはり、金はやがてなくなってしまう。
すぐに無くなってしまう。
だから結局、やっぱり頑張って働く、それしかないのである。
それしか不安を解消するすべはないのである。
しかし登山をすると、心も身体も健康的になるのは、間違いない。
だから本当は、毎日でも登山していたい。
しかし交通費とか、食費とか、もろもろかかるし、毎日登山なんて、できるわけがない。
しばらく働かないつもりであれば、ますます登山なんてできるわけがないし、美味しいものなんて食べることはできないし、買い物なんてできるわけがない。
しかし、金を使わずに生きていくことはできない。
金を使わないと、つまらない。
くそおもしろくもない毎日に、成り下がってしまう。
だから仕方がない。
頑張って、求職活動するしかない。
そして働いて、金を稼いでいくしかないのであった。