2013-05-20-01
投稿日
2024/10/18
愛情というものは健康に良いものなのだと、Hは思う。
それはうわべの愛情のことではなく、仲の良い家族が愛し合うような、「無償の愛」のことである。
それを赤の他人から獲得するのは難しい。
弱肉強食のこの世界では、熾烈なイス取り合戦が繰り広げられている。
とにかく人は強くなければならない。
権利や利益を自らの手で勝ち取っていかなければならない。
その競争相手である赤の他人から本物の愛情を獲得することほど難しいことはない。
ようやく獲得できたと思った本物の愛情が、実は単なるうわべの愛情に過ぎなかったこともある。
人は器を持っているのだ。
その器に愛情を注ぎ込むことで、その器に愛情が溜まっていく。
そしてそこから溢れ出た愛情こそが、こちらに返ってくる愛情である。
愛情を与えると、すぐにそれが返ってくるという甘い話ではない。
愛情を一与えれば、十返ってくるなら、どれほど楽だろう。
だが実際は、愛情を与えても、基本愛情は返ってこない。
惜しみなく存分に与え続けないと返ってこない。
百万円くれてやって、ようやく五万円が返ってくるぐらいのものである。
しかしそれもまた愛情の獲得に違いないだろうと、Hは思う。
割の合わない話であるが。
愛情の行為と思ってしていた事が、相手にとっては有難迷惑だったというケースもある。
しかしリターンを期待して注ぎ込む愛は、「無償の愛」とは言えないだろうと、Hは思う。
愛は、無償の愛でなければいけない。
それが相手の器から溢れ出たものこそが、自分に返ってくる、無償の愛である。
それこそが最も値打ちのあるものなのだと、Hは思う。