いいんだよ
投稿日
2024/10/28
驚いた。スーパーで安くなっているバナナを全部買いやがる。「お早めに召し上がりください」の三四本で百円のバナナである。それを選びもせずに全部カゴに入れやがる。
「貴様どういうつもりだ!」
「いいんだよ」
全然気にしない。本来その百円のバナナの中から特にお買い得なものだけを三袋くらい選んで買うものである。しかしこいつはそこにあった十袋をまったく選ばずに全部カゴに入れやがった。さらに牛乳を買う。今日はずっと様子がおかしい。お茶も飲み過ぎている。自動販売機を見かけるたびに温かいお茶を買いやがる。簡単に金を使いやがる。信じられない。お茶だけでもう五百円くらいは使っている。
「大富豪にでもなったつもりか?」
嫌味を言ってやる。
「いいじゃねえかお茶ぐらい。大した出費じゃないだろ? 知れたものじゃないか……」
ふざけたことを抜かしやがる。無駄な出費は一円もしない。それが基本のはずである。なのに今日に限って一体どういうつもりだ?バナナと牛乳を買って家に帰る。そして素麺を食う。
「ほんとうは酒を飲んでも良かったんだけどね……」
信じられない言葉が漏れた。ふざけんな酒なんか飲んでもなんにもいいことないぞ!
「まあ確かに酒飲んで逆に気持ちが悪くなることもあるからなあ。今日は気持ちが悪くなったりとかはしたくないなあ」
「それが酒を飲まない理由か?」
「そうだ」
家に帰って素麺を食ってまた外出しやがる。そして再び自動販売機で温かいお茶を買いやがる。
「貴様……いい加減にしないと処刑してしまうぞ!」
「いいじゃないかお茶ぐらい……」
「一円も無駄使いするなっ!」
「いいんだよ別に……」
こいつは一体どうしてしまったのか?明らかにいつもより財布の紐が緩い。ブックオフで立ち読みしてその後はゲオに行ってレンタルDVDのパッケージを一つずつえんえんと一時間以上眺めている。ゲオの外に出てまたローソンで温かいお茶を買いやがった。そしてまた漫画の立ち読み目的で本田書店に向かう。呆れて物が言えない。なんだそのいかにもハメを外してる感じは?
「貴様いつまでも外出してないで早く家に帰って勉強でもしたらどうだ!」
「いいんだよ……」
「なにがいいんだっ!」
「いいんだ……」
「良くないっ!」
「今日は俺の誕生日なんだから……」
「………………じゃあケーキでも買っとけ!」