大多摩ウォーキングトレイル(1)
投稿日
2024/11/09
二〇二四年十一月九日。土曜日。
比較的早く起床することが出来、外出の支度をして、登山靴を履き、まずは近所のセブンイレブンで温かい濃い茶をレジに置いた。いつも一言も喋ってくれない無口な女性店員がレジに立っていたが、思いがけず、
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
と声をかけてくれた。その女性もベテランバイトになり、少しは喋ってくれるようになったようだ。
小作駅で電車に乗り、青梅駅で乗り換えて、古里駅まで移動した。古里駅のセブンイレブンでなにか食べるつもりである。
駅前は、奥多摩町とauPAYが共催のスタンプラリーイベントのため、たくさんの人が集まっていた。奥多摩町のアプリをインストールしないと参加できないイベントなので、いつも無視していたが、あまりにも人が多かったので参加したくなった。それで地図などの案内用紙を貰って、受付して、アプリをインストールした。
案内の女性が詳しく色々教えてくれた。
「スタンプを押す場所は三箇所だけなんですね?」
「そうです。アプリでスタンプを押していただくのですが、もし押せなかった場合はバーコードをカメラ撮影して頂いても大丈夫です」
「それで四十%で買い物できるようになるんですね?」
「はい、ダウンロードしていただく形になります」
「ダウンロード?」
「クーポンをダウンロードして頂いて、それで割引でお買い物ができます」
感じ良くそう説明してくれた。
よし参加しよう。三時間くらい頑張って歩こう。ワクワクした。
まずは腹ごしらえである。セブンイレブンに入る。ほうじ茶と温かい濃い茶をカゴに入れる。レジの店員に、
「肉まん五個ください」
と言うと、
「四個しかありません」
と言われたので、
「じゃあアメリカンドッグを三本ください」
と言った。
「ケチャップはいりません」
とも言った。おしぼり一つとレジ袋も貰った。
早速アメリカンドッグを食べながら、ハイキングを始めた。八キロの長い道のりである。せっせと先に進まなければいけない。
スタンプラリーの一回目はトイレと、わさび田のある所だ。そこでアプリのボタンを押すと位置情報の許可設定のウインドウが出てきた後、一回目の部分がGETという文字に変わった。三つのボタン全部をGETに変えれば良い。
二つ目のスタンプを目指して橋を渡る。渓流ぞいを歩く。
前で自然の道に不慣れな男性が、恐る恐る、危なっかしい足取りで、ゆっくり歩いていた。急かすと悪いので、間隔を保ったままそれに続く。しかし後ろからも人がやってきた。やがて前の男性が後続に気づいた。恥ずかしそうな顔をして道を譲ってくれる。
解き放たれたように、ぐいぐい進む。何度も歩いた事のある道である。某恋活会社のハイキングイベントでも、このコースを歩く。
滝がある。小さな橋を渡る。滝と渓流の道のり。その癒し空間を登っていく。
登りきると、民家があった。そこで休憩している人たちは、
「ここって人が住んでんのかな? なんか生活感ないよね」
と、その民家に興味津々。
さらにゆくと前を歩いていた中年女性グループが道の脇に寄って服を脱いでいる。挨拶をして追い抜かす。
スタンプラリーの幟が出てきた。ここが二回目のスタンプ場所である。しかしアプリでボタンを押すもGETにならない。私だけでなく、みんなならない。
「あれー、おかしいなあ。電波悪いのかなあ」
そう言い合っている。
どうやら現在位置の認識がズレてしまっているらしい。GPS機能の不調である。何度やってもGETになってくれなかったので、代わりにバーコードをカメラ撮影する。写真を撮っておけば、スタンプを押したと認められると、案内の女性は言っていた。