槍ヶ岳へ 六
投稿日
2024/11/19
七月二十日。二十時十二分。横尾でテント泊をしている。
槍ヶ岳に登ってきた。横尾から出発して、槍ヶ岳に登り、横尾に戻ってきた。
十四時間三十分も歩いた。
横尾に戻ってきたのは十九時三十分であった。テント泊の受付をしてくれるかと心配したが、幸いしてくれた。ヘッドライトをつけて、テントを立てた。
そして今、テントに潜り込んでいる。ビールを五百ML飲んでいる。
とても疲れた。槍ヶ岳は甘くなかった。楽勝かと思ったら、大変だった。
よくこんな山に登るものだ。最後の三十分間が、スリリングすぎて怖かった。ビルの建築現場の鳶職の人でも怖いだろう。
でもみんな登っていた。
八人の団体がいた。若い女の子が「登れるかなー」と言っていた。でも普通に登っていた。
あんな危険な山に、みんな登っていた。もう二度と登りたくない山である。スリリングすぎる。
奥穂高岳とか剱岳とかも、きっとあんな危険な感じなのだろう。よくみんなこんな危ない登山をするものだ。
そういう山に登るのであれば、ボルダリングをした方が良い。
今日は横尾を出発して、槍ヶ岳山荘までせっせと歩いた。長い距離だった。想像以上に大変であった。
槍ヶ岳山荘でザックを置いて、槍ヶ岳山頂まで登った。登りはとてもスリリングだった。下りはそんなでもなかった。
八人の団体さんのリーダーは、映画『ちはやふる』の人と同じ方言で喋っていた。若い集団だった。私が山頂に登り始めてから、その集団も登り始めた。非常にスリリングな場所で、ぴったりと後ろにつかれたので、とてもプレッシャーを感じた。
「こんな危険な場所で煽るなバカ」
と思った。不愉快なリーダーだった。山頂に着いて標柱をスマホで撮影しているとそのリーダーが、
「撮りましょうか?」
と言ってきた。
「大丈夫です。ありがとうございます」
と答えた。すぐに山頂から下山しはじめた。
するとすぐに若い人が後ろからついてきた。明らかにその人のほうが早い。
なぜわざわざ私が下山した直後に下山するのか? イラっとした。また煽られている気がした。
「危険な場所で煽るなバカ」
と思った。プレッシャーだったので、その人には先に行って貰った。
するとまた早い人が降りてきた。ぐんぐんと差を縮め、また煽ってきた。プレッシャーだったので、先に行ってもらおうと思って、立ち止まって、道を開けた。でも先に行かない。私の後ろでぴったり待っている。
「お先にどうぞ」
と言うと
「いえいえ、どうぞどうぞ」
と返してきた。イラっとした。
「後ろに付かれるとプレッシャーなんですよ!」
ヒステリックに叫んだ。
「わかりました」
と言って、その人は先に行った。
殺す気かと思う。後ろから煽られ、焦って歩き、落ちて死んだらどうすんだ?
寒くなってきた。ビールを飲んでいる。服もけっこう濡れている。暖かくして早く寝た方が良さそうだ。
もう二十時四十四分。ビールを飲んでしまったので、後でトイレに行かなければいけないだろう。
みんな体力がある。歩くスピードは、私がぶっちぎりで一番遅かった。みんなから追い抜かされた。
毎週登山しているというのに、なかなか体力がつかない。体重が重すぎるのかもしれない。
とにかく寝よう。寒い。
今日の登山についてたくさん書こうと思っていたが、そんな元気は残っていない。
ビール五百MLは多すぎた。全部飲むのは一苦労。
汗で下着とシャツが濡れている。乾いているものに着替えよう。汗拭きシートで軽く体も拭こう。
ようやくビールを飲み干した。多すぎた。三百五十MLにしておけば良かった。
とても寒い。体を拭いて、乾いている服を着よう。そして寝袋に入ろう。八万円の雪山用の寝袋である。とても暖かい。早く寝袋に入らないと風邪をひいてしまう。
しかし槍ヶ岳はとても大変な山だった。かなり舐めていた。このレベルの山を登るのは大変だ。天気はあまり良くなかった。景色は基本、真っ白だった。ときどき霧が晴れて、雄大な景色を見せてくれた。
とりあえず北アルプスの主、槍ヶ岳をやっつけた。大きな実績である。この調子で奥穂高岳も剱岳も登りたい。
登山上級者の人たちに、あまり初心者扱いされないようになりたい。頑張らねば。