槍ヶ岳へ 七
投稿日
2024/11/19
七月二十一日。〇時十四分。
意味のわからない変な夢を見て、混乱した。いろいろなことが複雑に絡み合っていて、まったく意味が分からない。分からないことをなんとか分かろうとして、ずっともがいている。そういう落ち着かない状態で寝ていた。
起きてみると、深夜〇時だった。
状況はシンプルだ。横尾でテント泊をしている。
服が汗で濡れていたので、上高地で風呂に入りたいと思った。しかしネットで調べてみると、風呂の営業時間は昼の十二時からだった。ここを五時三十分に出発すると、八時三十分くらいに上高地に着く。そしてバスに乗る。
風呂は十時からだとばかり思っていた。しかし違った。それは十二時からだった。
残念ながら風呂には入れない。
というわけで、汗拭きシートで体を拭いた。下着、シャツ、ズボンを、すべて新しいものに着替えた。
それでも気分はすっきりしない。やはり風呂に入りたい。そしてさっぱりしてから家に帰りたい。
十二時まで上高地にいようか?
食欲がまったくない。気分が悪い。吐き気がする。昨日の夜は何も食べていない。ビールしか飲んでいない。
ビールを五百MLも飲んだのに、トイレに行きたくもならない。さらにお茶をたっぷりと飲んでみる。
携帯があまり充電できない。電池式の充電器に繋いでいるが、数時間たっても三%しか増えていない。電池があまり無いのかもしれない。新しい電池に入れ替えなければいけない。
本来であればとても腹が減っているはずなのに、食欲がまったく無い。こういう場合はゼリー飲料を飲むと良いかもしれない。
テントの中は臭い。不潔な環境だ。
どうしてトイレに行かないで済んでいるのだろう。不思議だ。ビールをがぶ飲みして寝たというのに。
どうも調子が悪い。ビールは飲まないほうが良かった。微妙に体調が狂っている。
少し腹が減ってきた。お茶のがぶ飲みが効いたようだ。トイレにもちょっと行きたくなってきた。
しかし十九時三十分に横尾山荘に飛び込んで、テント泊の受付ができて良かった。受付はもう終了してると言われるのではないかと思って、心配した。その場合はもう適当な場所でテントを立てるしか無かっただろう。
その場合、朝になってからテント代を払えば済むのではないか?
最悪、上高地まで歩いて、そこで野宿することも考えた。そんな風になってしまうと、とても悲惨だった。そんな風にならずに良かった。
槍沢ロッヂにはやられた。本来はそこでテント泊をするつもりであった。ババ平というテント場だ。しかしそこと受付の山小屋が九百メートルくらい離れている。山小屋で受付してテント場に行くまで、上り坂で四十分もかかる。それだったら八十分で着く横尾まで下ろうと思った。
下山中にババ平のキャンプ場を確認した。槍沢ロッヂまで〇・九キロという標識があった。そのくらいならすぐに着くだろうと思って、えんえん下ったが、山小屋はいつまでたっても出てこなかった。ようやく出てきたときには、また四十分も戻るのはきつ過ぎると思った。だったら横尾まで八十分かけて下っていこうと思った。
横尾の到着予定時刻は十九時三十分で、テント場の受付終了を心配したが、横尾山荘の人たちはきっとテント泊ができずに困っている登山者を見捨てないだろうと期待した。
急いで下山したつもりだったが、それでも予定通り、八十分後に着いた。四分くらいは早かった。十分以上早く着くつもりで急いだが、そうはならなかった。
十九時三十分はもう暗い。ヘッドライトをつけていた。しかし電池が切れかかっていて、ぼんやりした薄明かりの中、下山道を進んだ。
十九時三十分に飛び込んで、山小屋の人は渋々受け付けしてくれた。しかしそのあと小屋の前で佇んでいると、「早く向こうへ行け」と言わんばかりに、わざとらしく小屋の前をホウキで掃除しにきた。
しかし困ったことになった。今月は全然仕事をしていない。これだけ仕事をしていないと、もう来月の契約延長は絶望的だ。実に困った。
とりあえず寝よう。寝ながら考えよう。