路線情報の時刻を勘違いしてしまい、茅野駅で五十分ほどの待ち時間が発生してしまった。それでいったん駅の外に出て、食事を取ることにした。
　青春十八切符を見せればすぐに改札を出れるのだが、改札の人は、他の客と、長々と喋っている。いつ終わるとも分からないような、込み入った話をしている。
　青春十八切符を見せさえすれば、一秒で改札から出れる。しかし前の話が終わらない。
　私は駅員に青春十八切符をチラチラと見せたが、駅員は知らんぷり。イラっとして、強引に通ろうとした。
　すると、若い駅員は、
「待って待って、ちゃんと見せて」
　偉そうなタメ口で、そう言ってきた。話が済むまで、ちゃんと並んでろと云うのである。
　しかしやはり、前の話は、それから三分待っても、終わらない。
　青春十八切符を見せれば、一秒で済む話なのである。だったら駅員が気を利かせて、私を先に通せばいいではないか。こっちは一秒で済むのである。私を先に通してから、一時間でも二時間でも、好きなだけ込み入った話をすればいい。
　たっぷり待たされた後、ようやく先に通してもらった。
　しかし後でまた、ここを通るとき、その若い駅員から、説教されてしまうかもしれない。
「さっき、勝手に通ろうとしたでしょ？　二度とそんなことしちゃダメだよ」
　とか、偉そうに言われるかもしれない。
　二十代半ばくらいの若い駅員である。
　それに対して、
「偉そうに言うな！」
　そう怒鳴ってやることもできる。
　しかし、そんなことをするのは、あまりにもみっともない。そこは大人の対応で、ぺこりと頭を下げ、通り過ぎるのが正解。
　しかしまったく、嫌な気分にさせてくれる。大盛りパスタを食べ、嫌なことは忘れよう。
　食事を終え、電車の出発時間の十五時三分が迫ってきたので、駅のホームに向かった。
　先ほどの横柄な若い駅員に、こっぴどく説教されるのではないと思って、冷や冷やしている。
「さっき、勝手に通ろうとしただろ？　ちゃんと切符を見せてから通るようにして。二度とさっきみたいなことしちゃダメだよ」
　とか、偉そうに言われるかもしれない。緊張する。
　改札口にはやはり二十代半ばくらいの、若い駅員がいた。私は恐る恐る、青春十八切符を差し出した。
　すると、
「どうもありがとうございました」
　と、すごく丁寧な言葉をかけられた。
　さっきの奴とは別人らしい。まさか、同一人物？
　いや、やっぱり違うだろう。さっきの奴は地獄のように感じが悪かった。