婚活のイベントディレクター(2)
投稿日
2024/11/29
「大丈夫かどうか、まだ良く分からない状態です。不明点があった場合、誰に聞けば良いですか?」
「何かあれば、私に電話してください」
とM社長は言う。
イベントは二時間。
報酬金額は、1開催でも2開催でも、変わらず四千円なのだろうか?
あまりにも不明な点が多すぎたので、
「申し訳ありませんが、あまりにも分からないことが多すぎて、私には対応できそうにありません」
と、泣きを入れた。
「いきなりだと分からないので、最初は研修という形で、現場を見せて頂けませんか? そうすれば、次回からは対応できると思っております」
するとラインが返ってきた。
「す、すみません。1開催のままで大丈夫です。もう一つは潰すかもしれません。他のフタッフが行けるかも確認します。今日には返事します」
す、すみません?
なんとも軽いノリである。深刻に悩んだ私がバカみたいだ。
しかし、この駆け引きみたいな感じが、実に面倒くさい。このチャランポラン男が、社長なのである。
イベントディレクター募集の求人ページには、研修期間あり(一ヶ月)と、書かれている。だから最初は研修をさせてもらえると思っていた。
とにかくラインを返す。
「お手数をおかけしております。今回のものは、居酒屋かどこかでの、室内でやるイベントでしょうか? 十分おきくらいに男女の席を移動する、みたいな感じのものでしょうか? 一度研修として、現場を見せて頂ければ、次からは一人で進行できるだろうと思っておりますので、どうぞ宜しくお願い致します」
このラインは、一瞬で既読になった。しかしすぐに返事が返ってくると嫌なので、いったんスマホは機内モードにした。
とにかく説明があまりにも少なすぎる。「2開催」とか「席割」とか、分からない言葉が次々と飛び出してくる。そもそも、どういう内容のイベントなのかも分からない。
そんな状態で、
「大丈夫ですか?」
とか訊かれても、大丈夫かどうか、判断できるわけがない。
Q社の求人ページを見てみると、エンジニアの給料は二十五〜五十万プラス交通費となっており、正社員を募集していた。
しかしあのチャランポランな社長からアゴでこき使われるのでは、死ぬほど大変そうだ。だからエンジニアとしての求人応募は、やめておいた方が良いだろう。
プログラミングはとても難しい。だからああいうチャランポランな人間に、執拗に駆け引きを仕掛けられながら、やっていくことは出来ない。少なくとも私には出来ない。高度なプログラミングと、高度なコミュニケーションを両立させることはできない。
あの感じだと、無茶な要求も、次々と言われそうだ。
現在は、外部のウェブディレクターに、ウェブサイトの仕事は任せているらしい。しかしそのディレクターの返事がとても遅いので、困っているとのこと。なんでもウェブサイトのプログラミングは、ベトナムの会社に任せているらしい。それでウェブサイトに使っている金額は、一時期は六十万円くらいだったらしいが、現在は月十七万円まで抑えているそうだ。
そんなに安く済ませているのだから、きっと問題は山積みに違いない。
実に面倒くさそうである。駆け引きなんかも色々仕掛けてきそうだし、あまり参画したくない職場である。