婚活のイベントディレクター(5)
投稿日
2024/12/02
しかし何はともあれ、今日は十七時から、街コンである。私はそのイベントディレクターである。
どんな感じになるだろうか? みんな、普通に話すだろうか? イベント中は、基本、放置で良いのだろうか?
きっと、出しゃばってはいけないだろう。放置で良いだろう。
本日の街コンは、どんな感じになるだろうか?
*
街コンが終わった。
疲れた。思った以上に大変だった。
男性六人、女性八人。
参加費は、男性七千円、女性二千五百円。
会場は居酒屋。
がぶがぶ酒を飲む参加者たちのテンションは高い。
イベントディレクターの私は酒を飲まない。一人だけシラフで、酔っ払っている参加者たちの相手をする。
四十分おきに席替えをした。そのたびに連絡先交換を促した。
全員が一通りの異性と話せるように配慮した。
しかし指示通りに移動してくれない参加者が一人いて、計算が狂った。その男性参加者は、ひどく酔っ払っていた。
「あなたの座る席は、そこではありません。こっちです」
そう云うと、角が立ちそうだった。だから何も言わなかった。
しかし、完璧な席替え予定だったのに、計算が狂ってしまった。
みんな鯨のようにガブガブ酒を飲んでいた。とんでもなくハイテンションであった。シラフでそれに対応するのは、大変であった。
イベントは二時間で終了。さっさと帰った参加者もいれば、二次会に行く参加者もいるようだ。
Hさんという常連の男性参加者がいて、
「スタッフも一緒に飲めばいいのに。他の会に参加したときは、スタッフの人も一緒に飲んでましたよ」
と、言ってくれた。
しかし一緒に飲むよりも、黒子に徹するほうが、適切なように思えた。
みんなすごく盛り上がっていた。自己紹介とかも、勝手にやってくれた。
酒の力はすごい。
しかしこのイベントディレクター、慣れてる人は、2開催とか3開催とか、やるらしい。同時刻に2つも3つも、イベントを進行するということだ。しかし、ある程度手を抜かないと、そんなこと、到底やれないだろう。
ひとまず今日は、1開催を、うまくやれたと思う。初めてだけど、ちゃんと一人前の仕事ができたと思う。
私は趣味で、よく飲み会の幹事をしている。その経験が活きた。
参加費もしっかり貰った。お釣りもしっかり渡した。
男性は七千円という高い参加費なのに、ぽんぽんと支払っていた。女性も二千五百円と、けっこう高いのに、あっさり払っていた。
女性は支払い済み扱いの人たちがいた。もしかしたら、サクラだったのかもしれない。支払い済みの、場慣れした、若くて可愛い二人組とかいた。男女比を合わせるためには、きっとサクラも必要なのだろう。
常連っぽい参加者も何人かいた。
しかしたった三十〜四十分程度、一緒に酒を飲んで、話したところで、あまり仲良くなるとは思えない。楽しく飲んで、ぱっと騒いで、終わり。そんな感じになるだろう。
水商売っぽい女性もいた。特に賑やかに喋っていた。その女性が話題の中心になっていた。
おそらくカップルは一組も成立しなかっただろう。
イベント会社としては、それで良い。気にする点は、売り上げだけ。参加者がそれなりに満足して、また参加してくれれば良い。カップリングは、別に気にしなくて良い。
しかしイベントディレクターとしては、カップルを成立させたい。
酔っ払ってシラフの私に絡んでいた男性参加者。七千円も出して、一体何をしているのか。酔っ払ってスタッフに絡むような男性が、女性にモテるわけがない。ただ水商売っぽい女性の良いお客さんになるのが関の山だろう。