そして翌日――。
　婚活イベントのイベントディレクターの仕事は、とても大変だった。大変すぎて、体調を崩してしまった。めったに体調を崩すことがない私だが、喉が痛くなってしまった。
　しかし昨日のイベントディレクターは、貴重な体験であった。そして色々と、反省点があった。
　昨日は全然ダメだった。
　まず最初に、このイベントについて、もっときちんと説明すべきだった。どのような形で進めていくのか、それをまず、しっかり最初に説明すべきだった。
　最初に、適当に座ってもらい、適当に始めてもらった。そしてろくに説明もせずに、三十〜四十分ごとに、席替えをした。席替えごとに、連絡先交換を促した。
　しかし参加者たちは、戸惑っていた。
「え？　今連絡先交換するの？」
　みたいな感じになっていた。
　だから最初にきちんと説明すべきだった。例えば以下のように。

　本日進行を務めさせて頂きます。Ｔと申します。
　本日の流れを簡単にご説明いたします。
　本日は三十分から四十分ごとに席替えを実施いたします。移動するのは男性のみで、女性の席はそのままです。席替えの移動場所は、席替え時にご説明いたします。
　なお席替えの際には、五分程度の連絡先交換の時間を設けさせて頂きます。連絡先交換が終わったら、席のご移動をお願い致します。
　お手洗いはレジがある場所の奥にございます。
　喫煙される方は、こちらの部屋を出てすぐの場所に喫煙場所がありますので、そちらをご利用ください。
　では、本日一日、お願い致します。楽しい時間を過ごしましょう！

　くらいのことを事前に言えば、どれほど良かったか。そうすれば、その後の進行は劇的にスムーズになったことだろう。

　あとはクローズトーク。イベントが終わった時に、
「では本日はこれで終了です。連絡先交換が終わったら、お帰りくださいませ」
　みたいなことを言うわけだが、それももっと、気の利いた言い方があっただろう。
　これから二次会に行く人もいるだろう。二次会を促すような方向性に、もっていった方が良いのか、あるいは、もう帰りたい人もいるに違いないので、そこはあまり言わない方がいいのか……。
　クローズトークも大事である。十九時で終わりであれば、例えば以下のように。

　みなさん、お疲れ様です。
　現在の時刻は十八時五十分です。終わりの時間が近づいてきましたので、これからは連絡先交換の時間とさせて頂きます。
　それが終わりましたら、ご退場くださいませ。本日のイベントはこれで終了となります。
　意気投合された方同士で、これから二次会などもご検討されるといかがでしょうか？
　お財布や携帯電話など、お忘れ物がないように、お気をつけてお帰りくださいませ。
　本日はＱ社の街コンにご参加いただき、誠にありがとうございました！

　くらいのことを、しっかり言えれば、良かったのではないか。