第一〇回サークル登山 四
投稿日
2025/02/09
もう一人の男性の恒男は、登山の上級者である。しかし自己紹介を聞くと、まだ登山歴は五年との事だった。マラソンは三時間三十分くらいで走るスポーツマンである。
わたしは勝手に恒男の登山歴は二十年くらいで、登山をするために生まれてきたような男、くらいに思っていたので、たった五年と聞いて、かなり意外に思った。それも、登山をするのは、年に五〜六回とのこと。登山をするよりもむしろ、走る事のほうが好きらしい。よくマラソンの大会に出ているようだ。槍ヶ岳や奥穂高岳には登ったことがあるらしく、よく八ヶ岳にも行っているようだ。
恒男は八ヶ岳が大好きな人というイメージで、八ヶ岳しか行っていないのではないかと思っていたが、槍ヶ岳や奥穂高岳などの、北アルプスの超有名な山にも、しっかり登っているようだ。
そんなわけで、なんとか山頂に到着し、三十分間の休憩をした。
女性三人は同じベンチに座って、仲良くお喋りをしながら食事をしていた。
恒男とA男は、まるで二匹の一匹狼のように、それぞれ離れた場所に座って、クールに食事をしていた。
トイレの問題に関して。川苔山にはトイレが無い。そのため登山中にトイレがしたくなった場合は、どこか適当な場所で済ませるしかない。しかし女性陣は、トイレは、今回は大丈夫だったようだ。やはり山の中でトイレをするのは、とても抵抗があることなのだろう。
A男は山頂で、「今のうちにお手洗いを済ませて来ます」と言い残し、どこかに消えて行った。そしてトイレを済まして、戻って来た。
これもまた、A男の渋いところである。A男は女性陣に気を使ったような気がする。「トイレは我慢をせずに済ましたほうがいいですよ」と、彼は言いたかったような感じだ。みんなに聞こえるような大きな声で、「今のうちにお手洗いを済ませて来ます」と言い残して、どこかに消えたのである。