第一〇回サークル登山 五
投稿日
2025/02/10
そして下山。
登ってきた道を、そのまま下山する予定であったのだが、それではあまり面白みがないので、「古里駅まで降って行く別コースで下山しませんか?」と、みんなに提案してみた。女性陣は、「そうですね。そのほうが面白そうですね」と同意してくれた。A男は「みなさんがそれで良かったら、わたしもそれで大丈夫です」という、渋い返事を返してきた。
その下山コース。
私は始めて歩くコースである。地図を睨みながら、みんなを案内した。
もたもた迷っていると、登山上級者の恒男が、「地図、僕が見ましょうか?」と言ってくれたが、ここで甘えてはいけないと思い、「いえ、大丈夫です!」と、突っ張った。そして地図を睨みながら、慎重に初めてのコースを進んだのだが、それでも道を間違えてしまった。
「あ、すみません、戻ってください。さっきの道を右でした!」と叫ぶと、疲れ果てている女性陣は苦笑いを浮かべた。そして元来た道をしばらく戻り、それから正しい道に入って行った。
その道の途中、「赤久奈山まで十メートル」という標識があったので、「そっち行ってみましょうか?」という話になった。しかし十メートルなんて真っ赤な嘘で、よく見ると、一という数字の前の部分が、えぐれている。この部分に、一または七などの数字が入っていたように見える。
「どうします? 赤久奈山、行ってみます?」
私がそう提案すると、女性陣は迷っていた。冒険を取るか、安全を取るか。
もうかなり時間は遅れている。ことによると下山する前に暗くなってしまうかもしれない。
しかし私としては、ここは安全よりも冒険を取りたいという思いもあり、「どうですか、行きませんか」というように、おススメしたのだが、ここでバチっと恒男が、「いや、下山が遅くなるかもしれないので、安全面を重視して、赤久奈山はやめておきましょう」と、確信のこもった声で、宣言した。
その声には非常に力があった。そして赤久奈山は諦めるという、安全な選択を取る事にした。