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甲武信ケ岳からの下山時にSさんに会いました
投稿日
2018/04/22
2018年4月21日から甲武信ケ岳でテント泊をしてきた。
甲武信ケ岳、登りがとてもきつい山だった。
道中のほとんどが急坂で、そんな道のりが6時間も続く。
おまけに山頂付近にはまだ雪がだいぶ残っており、軽アイゼンなどが必要だった。
私はチェーンスパイクでなんとか歩いたが、滑落しそうな道もあって、ひやひやしながら歩いた。
軽アイゼンとピッケルがあれば、万全であっただろう。
チェーンスパイクでも大丈夫といえば大丈夫だが、滑落しないように注意はしなければいけない。
道中はえんえんと木に囲まれた道のりが続き、まったく景色は楽しめない。
特に面白みの無いような坂道を、えんえんと歩く。
テント泊の装備の入った重いリュックを背負っていたためか、何度も休憩して、行動食もこまめに摂取した。
かなりつらい道のりである。
それでも山頂付近はかなり景色が良かった。
山頂よりも、40分ほど手前のところだっただろうか、一番の絶景ポイントがあった。
富士山が大きく見える、すごく雄大な景色だった。
まったく、家に持って帰りたいような雄大な景色。
苦労してそこまで登ってこなければ、見ることのできないような迫力のある景色だった。
山頂よりも20分手前に甲武信小屋がある。
その小屋がテント泊の予定地だった。
しかしその甲武信小屋までの道のりがとても長く感じた。
そして小屋の手前の30分くらいの道のりが、一番積雪が多い場所で、注意して歩かなければ滑落しそうな感じの、危ない道のりだった。
軽アイゼンやチェーンスパイクなしではその道を歩くのは非常に厳しいだろう。
甲武信小屋から山頂までの20分間の道のりは、それほど雪は多くなくて、比較的歩きやすい道のりだった。
しかしほんと苦労して山頂に到着したので、山頂に到着したときには思わず、「いやーやっとついたー。とうとう来たぞー」と、大きな声で言ってしまった。
誰もいないと思って大声でつぶやいてしまったのだが、標柱の裏にはご夫婦がいた。
しまった、と思ったがもう遅い。
ちょっと気まずい思いをしながら、ご夫婦に挨拶をした。
山頂を踏んだあとは、甲武信小屋に戻ってからテント泊。
小屋のご主人、すごく話しかけてくる人だった。
私だけではなく、みんなに話しかけていた。
軽くジョークなんかも言っていた。
とても楽しい感じの人だった。
面倒見もいい人みたいで、テント泊をする若者グループがスリーピングマットを持ってきていなかったらしく、それでご主人は銀マットを貸してあげたようだった。
日の出の時間とかも、こちらが尋ねる前に教えてくれた。
とても話し好きな人のようだった。
私も今回、小屋のご主人とか、他の登山者とか、けっこう話しかけてもらえることもあったのだが、私はそれにノリが良く応じるという感じではなく、ちょっと不愛想な感じで、基本的には会話を避けているような態度を取ってしまった。
これはまあいつものパターンである。
私は基本的には人と打ち解けにくい性格の人間のようである。
工場勤務をしてたときなんかでも、仲良くなるまでに半年くらいかかっていた。
テント泊も、テントを立てるともう早々とテントの中にこもってしまい、ご主人や他の登山者との交流は一切しなかった。
テントから出たのはトイレに行くときだけで、それ以外は一切テントから出ず、なんと今回は夜空を見ることさえも、うっかりして忘れてしまった。
良い天気だったから夜空もきっときれいだったに違いない。
しかし夜空、まったく見なかった。
これは痛恨のミスである。
テント場には若いグループもいて、楽しいおしゃべりもよく聞こえてきた。
19時前にテントを出てみると、テント場はひっそりとしていて、小屋のほうは明かりが煌々と灯っていて、にぎやかそうな感じに見えた。
テント泊の人も含め、みんな小屋や、小屋の前のベンチやテーブルのスペースで、見知らぬ者同士でも楽しく交流をしていたのかもしれない。
小屋のご主人がとても明るく楽しくおしゃべり好きな人だったので、その交流も活発であったのかもしれない。
しかし実際は私が勝手にそう思っただけで、テント場はたしかにひっそりとしていたが、テント場の人たちはみんなテントの中でひっそり過ごしていたのかもしれない。
小屋での交流なんかが苦手な人が、テント泊をするというケースも多いのではないかと思う。
しかしそのときの私は自分以外はみんな小屋に行って楽しく交流してるに違いないと思い込んでいて、自分一人だけそんな輪に入っていけず、テントの中で引きこもりになっているような感じで、自分の人と打ち解けにくい性格、そういった場を避けたがる性格というのを、残念に思ったりもした。
そして翌朝。
朝になってからは、一番最初のバスに乗って帰りたいと思って、大急ぎでテントを畳み、まるで逃げるように小屋を後にした。
他の人は朝のひとときもとてものんびり過ごしている人が多かったようだ。
そんな感じで下山開始。
山小屋とかでの登山者同士の交流になかなか入っていきにくい自分の性格を思う。
山小屋では知らない人と相部屋になる機会も多いと思うし、場合によっては、仲良しグループと相部屋になるときもあるだろう。
そんなとき、けっこうきついなと思う。
楽しく交流できればいいけど、ちょっとかなり気を使ってしまいそうだ。
やっぱり私はとりあえずはテント泊がいい。
でも山小屋での登山者同士の交流に入っていくことができれば、またよりいっそう登山が楽しくなるに違いない。
そこらへんは今後の課題である。
話しかけてくれた人とは、感じよく話に応じることを義務として、自らに課したほうがいいのではないかと思ったりする。
こんな風に交流を避けながら登山するなんて、登山の大きな楽しみの一つを捨ててるみたいで、かなり損してるのではないだろうか。
そんな風に、思いつつ、とりあえず現状はテント泊が一番いいかなと思う。
テント泊だとそんなに交流に気を使う必要もないだろう。
でも今後交流できそうだったら、交流もしたほうが楽しいかもしれない。
そんな具合に、なんかちょっと、自分ってダメだなー、人と打ち解けるの苦手だなーなどと、かなりネガティブなことばかり考え、孤独感なんかもかなり感じながら、険しい顔をしてもくもくと下山をしていた。
そんなとき、下山途中でSさんに会った。
Sさんは登ってくるところだった。
Sさんとは前に一緒に塔ノ岳に登ったことがあるし、そのときには登山後に一緒にとんかつも食べに行った。
とても感じが良い人で、小学校の先生をしている。
44才の私と同年代くらいの人である。
むこうからやってきたのがそのSさんだったので、かなりびっくりした。
そしてしばし足を止め、話をした。
なんでもSさん、甲武信ケ岳を日帰りで登るそうだ。
「明日休みなんですか?」と思わず聞いてしまった。
休みではないらしい。
それでも本日、がっつり日帰り登山をするようだ。
甲武信ケ岳の日帰りはかなりきつい。
登りは6時間、下りは4時間くらいかかるので、合計10時間の登山になる。
とにかく登りがずっと坂なので、かなりきつい。
ちょうどきつさは富士山と同じくらいではないだろうか。
ただ富士山と違う点は、高山病の心配はないという点だ。
最初日帰りすると聞いたとき、甲武信ケ岳で日帰りなんかできるのだろうかと思った。
そして日帰りするのであれば、先を急がなければいけないはずだ。
あまり長話をしてるヒマもないだろう。
私はそう思って、長々と話をしたいところではあったが、話は短めで切り上げて、それでSさんと別れた。
短い時間だったが、とても楽しい話ができた。
Sさんは久しぶりにお会いしたと思っている人の一人だったので、今回会えてとても良かった。
Sさんは年代も私と同じくらいだし、体力も私と同じくらいだ。
しかしSさんはエベレストに登ることを目指している。
むりでしょ。
と、内心思っていた。
なぜなら私と体力のレベルは同じくらいだからだ。
だからSさんがエベレストに登るということは、私がエベレストに登るということと、ほとんど同じである。
しかしSさん、本気のようだ。
今回、次の日は仕事だというのに、甲武信ケ岳の日帰り登山に来ている。
そして毎日通勤時には20キロのリュックを背負って歩いて通勤してるらしい。
どうやらガチでエベレストに登る予定らしい。
すでにSさんは北アルプスの槍ヶ岳には登ったことがあるようだ。
Sさんと会ったのは徳ちゃん新道という道の後半部分だった。
それを考えると、Sさんが登りはじめたのは、6時くらいからだと思う。
Sさんと会った時間は、7時17分くらいだったと記憶している。
だからかなり早い時間帯から登りはじめたのだと思う。
いやおそらく、Sさんの登山スタート時間は5時台だと思う。
5時ちょうどくらいかもしれない。
そんな時間にバスは無い。
間違いなく、車で来たのだろう。
車がある人はほんとうらやましい。
車はほんと便利だ。
車があれば、どれだけ登山がやりやすいだろう。
私は車の免許を持っていないので、車を持っている人がとてもうらやましい。
Sさんはあの調子だと、順調にいけば、16時前には戻ってこれるのではないかと思う。
そんな感じで、下山時に久しぶりに会いたかったSさんに会うことができた。
そして短い時間だったが、話をすることができた。
自分の交流の苦手さを気に病んでいたときだっただけに、Sさんと話せてとても気分が良くなった。
やはり人との交流というものはとても良いものだ。
そして自分が人との交流ができない人間ではないことを、再確認できた。
そりゃそうだ。
飲み会の幹事をすることもあるし、登山イベントの進行をすることもある。
やろうと思えば交流はできる。
ただしばらくそういう場から遠ざかっていると、交流できないようになっているのではないかという不安はある。
しかしまあ、とりあえず大丈夫そうだ。
登山というものは、単にスポーツや、景色を楽しむということだけでなく、何かいろいろなことを考えさせてくれるものだ。
登山者もいろいろな人がいて、礼儀とかマナーが悪い人もいるが、ほとんどの人は礼儀正しくマナーが良い。
私も登山にもう少しなれてくれば、登山者同士の交流や、小屋の主人との交流も楽しくできるようになるかもしれない。
それもまた、今後の目標の一つと言えるだろう。