飛龍山をご存知ですか?
投稿日
2018/05/10
いかにも恐ろしげな名前の山、飛龍山をご存じだろうか。
大洞山ともいうらしい。
飛龍山は奥多摩の雲取山の近くにある山である。
飛龍山、私は最初にこの山の名前を見たときは、とてもビビった。
恐怖の山だと思った。
なぜなのか。
話せば少し長くなる。
なるべくかいつまんで話すことにする。
あれはもう2年ほど前になるのだろうか。
そのとき私ははじめて雲取山に登った。
登山のど素人、初心者のときである。
地図もコンパスも持たずに、雲取山に登った。
二日ほど前に購入したばかりの60Lのリュックと、テントと寝袋を持って、雲取山に行った。
テントと寝袋があれば、いざというときは山の中で泊まれるでしょうと、軽く考えていた。
実に、ヘッドライトも懐中電灯も持って行かなかった。
そのときに、雲取山に登り、そして三峯神社方面に下山した。
どうやら日帰りできそうだと思って、登山のあとは知り合いのラーメン屋に行ってラーメンを食べに行こう、などと考えていた。
しかしなかなか三峯神社に到着しない。
そもそも当時、三峯神社という神社のことも、まったくわかっていなかった。
下山の途中、道はどんどん暗くなる。
私は急いで下山する。
なんとか暗くなる前に三峯神社にたどり着きたいと思った。
しかし残念ながら、下山の途中で真っ暗になってしまった。
やばい。
真っ暗になってはじめてそう思った。
まったく見えない。
目をつぶっているのと、同じくらいに暗い。
こんなに暗いと、テントも立てられない。
そもそもテントは買ったばかりで、立て方もしらない。
もう真っ暗でどうしようもない。
ヘッドライトも懐中電灯もない。
そんなとき、私を救ったのはスマホである。
スマホに懐中電灯アプリがあるのではないか?
私はさっそく探して、スマホで懐中電灯アプリをダウンロードして、インストールした。
そしてスマホの懐中電灯アプリで、道を照らして、下山を続けた。
そして三峯神社に到着。
17時30分くらいだっただろうか。
ひとっこ一人いない状態だった。
最後のバスはもう行ってしまっている。
なんだこの神社は?
と、思った。
ひとっこ一人いない。
しーんと静まり返っている。
でも、小さな建物には明かりがついていて、中には人がいるようだった。
でも、声をかけにくくて、ここはどこですか?とか、声をかけることはしなかった。
最後のバスはない。
それはわかった。
では歩いて帰ろう。
歩いていれば、どっかコンビニがあるような大きな道に出るだろう。
私はそう軽く考え、歩き始める。
しかし歩けども、歩けども、おんなじような道の繰り返しである。
ずっと車道だ。
車がびゅんびゅん走って、すごく危ない。
やがてコンビニがあるような大きな道に出るはずだ。
そこからはどっかしらの駅までのバスもあるはずだ。
なんの根拠もなく、私はそう考えていた。
しかし三時間ほど歩いても、同じような車道の道のりの繰り返しだった。
もうダメだー。
そのとき、私はラインで知り合いとやり取りをしていた。
その人が、三峯神社に宿泊施設があるので、三峯神社に戻ったほうがいいと教えてくれた。
それしかない。
私はそう思い、ひとまず三峯神社に電話をかけた。
でも宿泊は予約でもういっぱいとのことだった。
今どこにいるんですか?
と、訊かれた。
三峯神社から三時間くらい歩いたところにいます。
と、答えた。
すると電話口の人は、車で迎えにいきますから待っててください、と、言ってくれた。
そして30分後くらいに、救助隊の人たちがやってきた。
私は救助隊の人に救助され、三峯神社の宿泊施設に泊めてもらった。
そのときに入った温泉は、すさまじく気持ちよかった。
その日、私はひどい目にあった。
その翌日、私は再び雲取山に登った。
このまま帰ると遭難しましたで終わりなので、名誉挽回、再び雲取山に登った。
そして今度の下山は、三条の湯方面で下山した。
そこがまた、すごかった。
シカが6匹くらい出て来た。
雲取山のシカたち、めちゃくちゃ怖かった。
動きがめちゃくちゃ早くて、めちゃくちゃ怖かった。
三条の湯に下るコースは、とても恐ろしいコースだった。
クマが出るのではないかと心配した。
クマのこともなにもしらなかった。
私は棒きれを持って、クマが出てきたらその棒で戦おうと身構えながら、下山を続けた。
三条の湯へ下るコース、誰にも人に会わなかったが、一人だけ、人に会った。
30代後半くらいの男性だった。
私はその人に尋ねた。
この先、バス停ありますか?
その人は答えた。
ずっと行くとお祭りってバス停があります。
そこからバスに乗れますよ。
私はほっとした。
おそろしい道のりをびくびくしながら進んでいく。
ほんと、シカがごろごろ出て来た。
なんか動物たちの家に土足で入り込んでしまった、そんな感じだった。
場の空気が、ぴりぴりしているように思えた。
そんな中、下山する。
そしてようやっと、三条の湯に到着した。
そこまで来ると、もうクマが出る心配はなさそうに思えた。
雲取山、とても恐ろしい山だった。
そこからなんとか下山した。
三条の湯に到着した。
その時に見た道標には、飛龍山という文字があった。
飛龍山、標高を見ると、雲取山よりも高かった。
このさらに奥に行くと、飛龍山という山があるのか。
なんて恐ろしい世界なんだ。
名前からして恐ろしい。
恐怖の三条の湯までの道のりを終えたあと、もっと奥に行くと、恐ろしげな山、飛龍山という山がある。
なんて恐ろしい世界なんだと思った。
三条の湯のことも何も知らない。
私は三条の湯をスルーして、バス停に向かった。
でもバス停、なかなかつかない。
道、間違えた?
と、思わせられた。
道標もまったくない。
地図もない。
GPSなんかのことも知らない。
ずっと行けば、お祭りというバス停があるといったけど、いつそのバス停に着くのだろう。
三条の湯からバス停までは30分くらいで着くと思っていた。
しかし実際は、三条の湯からバス停までは3時間くらいかかる。
私はそれを知らなかった。
三条の湯の人に、聞いてみるということもしなかった。
なんかこんな奥地に変な小屋があって、なんか恐ろしげに思えた。
そこにはきっと恐ろしげな人たちがいるのではないかと思えた。
道を間違えたのではないかという不安に駆られながらも歩き続け、ようやくお祭りバス停に到着した。
しかしバスが来るのは二時間あとだった。
バスを待っている間に、あたりは真っ暗になった。
真っ暗な中、ひたすらバスを待ち続けた。
そしてようやっと、バスが来て、そのバスに乗って、奥多摩駅に帰ってきた。
まったくもって、無謀極まりない登山であった。
そのときに見た飛龍山。
恐怖の山だった。
名前からして恐ろしげだ。
その飛龍山に、機会があれば登ってみようかと思っている今日この頃だ。
飛龍山の標高は2077メートルである。
雲取山よりも高い山だ。
東京都ではないのだろう。
山梨になるのだろうか。
もし飛龍山が東京都だったら、東京で一番高い山は雲取山ではなく、飛龍山ということになっただろう。
飛龍山に登る場合は、奥多摩駅でバスに乗り、丹波まで行く。
そこから飛龍山に登る。
そして登った後は、三条の湯に行って、テント泊でもすると良いだろう。
三条の湯の人たちは、けっこう感じの良い人たちである。
三条の湯で一泊して、翌日にお祭りバス停まで移動して、奥多摩駅まで帰ってくるというコースになる。
あの恐ろしかった飛龍山にもし登ることができたとしたら、それは私にとっては登山者としての成長の証といえるのかな、と思ったりする。