本仁田山、ああ本仁田山、本仁田山
投稿日
2018/05/11
奥多摩登山の入門登山といえば、高水三山が有名だ。
ちょうどそれと同じくらいのレベルの山として、本仁田山という山がある。
この山には思い出がある。
前に高尾山のイベントに参加したとき、私は周りに対して、「私は奥多摩を極めております。奥多摩の有名な山はもう全部登っています」、そのように言って、威張っていた。
すると隣の女性が「本仁田山には登られました?」と、訊いてきた。
私はそれに対して、「ほにたやま?聞いたことがない名前ですね。奥多摩の山ですか?」と、答えた。
それに対して女性は何も言わず、ただただ苦笑いしていた。
本仁田山を知らずしてよく奥多摩を極めたと言えましたね。この嘘つき!
そんな女性の心の声が聞こえてきたような気がした。
いや、違う。
さすがに本仁田山の名前は知っていたはずだ。
しかしまだ登ったことがない山だった。
だから私は女性からの質問に対して「いや、本仁田山はまだ登ったことないですねー」と、答えたと思う。
それに対して女性は、ただただ苦笑いを浮かべていた。
本仁田山も登ったことがないくせに、よく奥多摩を極めていると言えましたね。このペテン師!
そんな女性の声が聞こえてきたような気がした。
本仁田山、前に一度だけ登ったことがある。
奥多摩駅から徒歩で登れる山である。
山頂に登った後は、確か、鳩ノ巣駅に降りて来たと思う。
だいたい4時間くらいの登山であったと記憶している。
しかしとてもハードな登山であった。
奥多摩駅からの登り道は奥多摩三大急登と言われているような道のりのようで、とても急な坂であった。
なんでも本仁田山は、会社の新人研修などで、登ったりする山らしい。
新入社員に過酷な登山をさせて、その精神を叩き直そうという狙いなのだろう。
その女性もおそらく、本仁田山には登ったことがあるのだろう。
登山というものが一体どういうものなのか?
それを知らしめるためには、本仁田山の登山がちょうどいい。
じゅうぶんきついし、しかし歩く時間は4時間程度と、そんなに長いわけではない。
その本仁田山のことを、見直している今日この頃だ。
本仁田山に登る道のりが、普通の道のりのほかに、まだ三つあるようなのだ。
それらはすべて地図では破線で示されている道のりである。
破線ということは、悪路ということである。
奥多摩駅からすぐ近くの山、本仁田山。
比較的手軽に登れる山。
きつい割には初級レベルの山とされている山。
その本仁田山には四パターンの登るルートがある。
普通に、奥多摩駅から登るルート。
いや、違う、鳩ノ巣駅からの実線ルートも入れると、五パターンの登るルートがある。
普通に、奥多摩駅から登るルート。
普通に、鳩ノ巣駅から登るルート。
そして、鳩ノ巣駅から破線で登るルート。
そして、もえぎの湯のあたりから破線で登るルート。
そして、大沢というバス停のあたりから破線で登るルート。
大沢というバス停は、川乗橋バス停の一つ手前のようである。
手軽な山とされている本仁田山であるが、けっこう遭難話を聞くこともあるし、雷に打たれて亡くなられた著名な登山家の話なども聞く。
決して、侮ってはいけない山である。
そしてその本仁田山に、こんなにも破線ルートがあったとは。
ここにちょっと面白みを感じている。
奥多摩駅から最も近い山、本仁田山。
それが意外と、さまざまな登るルートのある、なかなか面白い山ではないかと思い始めている今日この頃だ。
エベレストだろうと、本仁田山であろうと、アクシデントがあったらケガをしたり死亡したりすることは同じである。
本仁田山であっても、破線ルートで登るのであれば、決して安全な登山とは言えなくなる。
それなりに難しい登山になる。
近場で難しい登山を堪能したいのであれば、本仁田山の破線ルートで登るというのも、良いかもしれない。
破線ルートの一つに、開始点と終点がもえぎの湯というルートもある。
最後にもえぎの湯に降りてきて、そこで風呂に入って、きれいになってゆうゆうと家に帰る。
それもまた、面白いのではないだろうか。
破線ルートといったところで、その道を歩いた経験が豊富になれば、安全に歩くことができるようにもなるだろう。
ちょっといっちょう、開拓してみるのも一つの手かな。と、思わないでもない。
もしタイムマシーンがあったなら・・・
「本仁田山に登ったことがありますか?」
「はい、すべてのルートで登ったことがありますよ。知ってます?本仁田山、登るルートが5つもあるんですよ。実に面白い山です。私はいつももえぎの湯のところに下山して、風呂に入ってさっぱりして帰ります」
「そうでしたか。さすが奥多摩を極めてますね!」
「いえいえ、それほどでも。がははははは」