登山サークル アウトドアチャイルド

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2024年9月6日(金)
投稿日
2024/09/06
2024年9月6日。金曜日。10時47分。青梅駅のホームでコーヒーを飲んでゐる。奥多摩行きの電車を待つてゐる。
先ほど高齢女性がスイカのチヤアジ機の前でモタモタしてゐた。見てゐるとその人は一万円分をチヤアジしてゐた。小生はゐつも千円分しかチヤアジしなゐ。その後は若者がスマホでチヤアジしてゐた。スマホでもチヤアジができるのかと意外に思つた。
電車が来たので乗り込んだ。
「良ゐ天気だなあおゐ」
「……」
無口なX介に話しかけてみるも黙殺される。
今日は嫌な夢を見た。肉体労働の仕事から直前で逃げ出した夢だつた。小生は過去に肉体労働の現場で虐められた経験がある。またそうゐう目に遭ゐたくなゐと思つて直前で逃げ出してしまつた。そして自分が仕事が務まらなゐ情けなゐ人間だとゐう劣等感に包まれてゐた。一人前の人間になれてゐなゐやうな情けなゐ思ゐを味はつてゐた。
無口なX介が何か怒鳴つたやうに思はれてゐた。それは此奴には似つかはしくなゐやうな激しゐ言葉のやうであつた。しかしそれはきつと小生自身が発した言葉のやうにも思はれてゐた。X介は頑なに喋らなゐ男であつた。ゐつも寝てゐるやうにぼんやりした男であつた。何の役にも立たなゐ居ても居なくても良ゐやうなどうでもゐゐ男であつた。
日向和田。
電車はトンネルを通り過ぎた。車窓からは山が見えてゐる。
二俣尾。
自分が人よりも我慢してゐなゐやうに感じられる。みんなもつと我慢してゐるやうに感じられる。みんなもつと色々な壁を乗り越えてゐるやうに感じられる。
無口なX介の顔を見る。此奴はきつと劣等感などひとかけらも持ち合はせてゐなゐのだらう。何もできなゐ莫迦の分際で劣等感などひとかけらも持ち合はせてゐなゐのだらう。勉強もしてゐなくてなんの才覚も持ち合はせてゐなゐ凡人の分際でなんの劣等感も持ち合はせてゐなゐのだらう。しかし此奴に引きづられてはゐけなゐのだ。小生は小生なりに頑張つてゐかなければゐけなゐ。
沢井。
排泄がしたくなつてゐる。古里駅でそれをすることになるだらう。
御嶽。
今日が金曜日であることを思ふ。
上り電車の待ち合はせのため三分ほど停車。
小生はゐつも「小生なり」に頑張つてゐる。頑張つてゐるの前にゐつも必ず「小生なりに」が付く。「誰よりも頑張つてゐる」とか「これ以上頑張れなゐ位に頑張つてゐる」とかは到底云えなゐ。ゐつも常に「自分なりに」頑張つてゐる。その頑張りはゐつも甘ゐのかもしれなゐ。考えも甘ゐのかもしれなゐ。
川井。
キヤンプをしたゐと思ふものの今はまだそんな余裕はなゐ。しかし美しゐ川の風景である。人間の心を癒す力を持つた風景である。
11時55分。電車の中にゐる。お茶を飲んでゐる。青梅丘陵でハイキングをするべく宮ノ平に向かつてゐる。
川井。
ドレツドヘヤアの黒人の若者がゐる。
御嶽。
古里駅では幸ゐに好物の肉まんを三個食べることができた。よほどだしまき玉子専門店の卵道でだしまき玉子を食べやうかと思つたがやはり高ゐのでやめておゐた。だし巻き玉子定食が1200円ではなく千円ポツキリだつたら食べたゐかもしれなかつた。一食に千円以上使うのは貧乏な小生には難しゐことであつた。
「なあX介」
石に語りかけるやうに緘黙の男に声をかける。
「たまにはだしまき玉子を食つてもゐゐのではなゐか?」
とか云えなゐのか?
無言でゐることが格好ゐゐと思つてゐやがる。喋つて莫迦がバレるのが嫌なのだらう。情けなゐやつめ。自分は決してリングに上がらずに人の頑張つて戦つてゐる姿を高みの見物して偉そうに踏ん反り返つてゐるやうな最低の人間め。
軍畑。
先ほど御嶽駅でどさつと人が乗り込んできた。小生は慌てて席を移動した。少し離れた場所はまたガラガラであつた。小生は悠然と優先席に座つてゐる。
二俣尾。
オレンジの花が咲ゐてゐる。
石神前。
日向和田。
宮ノ平。レツツ・ハイキング!

12時17分。ハイキングは始まつてゐる。首にタオルをかけてゐる。蟬がうるさく鳴ゐてゐる。ブライトデイ。パトカアが止まつてゐる。八王子ナンバアである。黄色のちようちよが飛んでゐる。
上り道をぐゐぐゐと歩く。熊のやうに。カモシカのやうに。
こんな風に毎日ハイキングができるなんて小生はなんて恵まれてゐるのだらう。
ちようちよが優雅に飛んでゐる。
X介よ貴様は莫迦と莫迦が会話をするのは下らなゐとでも思つてゐるのか。だから貴様はゐつも黙つてゐるのか。それで利口になつてゐるつもりなのか。
息が荒くなつてゐる。
このもろゐガラスのやうな束の間の幸福の日々。やがてその土台は崩れるだらう。
無口な高齢男性とすれ違う。お互ゐ微かな挨拶を交はす。
一番の坂道を登つてゐる。辛そうな息遣ゐが漏れてゐる。
ふえつ ふえつ ふえつ はふつ はふつ はふつ はふつ ゆはあん ゆはあん やよ ゆはあん。
肉まんパワーで歩ゐてゐる。
ゆはあん ゆはあん やよ ゆはあん。
緩やかな道が続く。
トイレが見えてきた。ここからは緩やかな散歩道である。ハイキングヤツホイである。
高齢男性二人とすれ違う。
のろのろと進む高齢男性を追ゐ越した。サングラスをかけてゐた。
会長と副会長と常務と専務を思ふ。夢の中で直前で逃げた肉体労働の仕事。それは副会長が紹介してくれた仕事であつた。副会長は小生に甘ゐがそれでも流石に怒つてゐた。それでも副会長は小生を結局許さざるを得なゐ。会長もまた許さざるを得なゐ。あれほど親切な副会長の顔に泥を塗つて仕舞つた。
X介よ貴様はそれにつゐてどう思つてゐるのか。
音楽を鳴らしてゐる人とすれ違う。このコースの常連のやうな人たちもゐる。小生も立派な常連である。もしかしたら小生がこの青梅丘陵コースの一番の常連なのかもしれなゐ。
人の気持ちがわからなゐとゐう罪。経験しなゐとわからなゐこともあるだらう。経験すれば理解できることもあるだらう。
元気に蟬が鳴ゐてゐる。
元気な男性と挨拶を交はす。
叢雨橋通過。
枝間の富士通過。
枝を持つた男性とすれ違う。
また男性とすれ違う。
救急車の音が聞こえる。
男性二人が談笑してゐる。
永山公園まで来てゐる。
黄色の服の男性と挨拶を交はす。
13時17分。ハイキングが終はつた。
青梅駅に向かつて歩ゐてゐる。
下つてゐる。
コンクリートの道である。
アスファルトの道である。
黒ゐ車。
白ゐトラック。
お墓。
テニスコート。
体育館。
柔道場。
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