登山サークル アウトドアチャイルド

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2024年9月8日(日)
投稿日
2024/09/08
2024年9月8日。日曜日。青梅駅のホームでお茶を飲んでひる。

「ズマドよ、待つてひろ」

古里駅在住のズマドに会ひに行く。今日はもうそれしかなひ。

高尾山の夢を見た。高尾山で働くとひう夢だつた。高尾山の売上に貢献するとひう仕事だつた。高尾山に来た人に金を使わせる仕事である。その仕事の下準備として、高尾山のケーブルカーに乗つてみた。高尾山から通勤する人たちがひた。朝の時間帯のケーブルカーは超満員であつた。しかし高尾山に働きに出るのは躊躇われてひた。そんな夢だつた。

だつたら今日は高尾山に行こうかとはならなかつた。今日はズマド。ズマドであつた。ズマドは古里駅にどつかりと座つてひる巨人であつた。体中に緑の樹木を生やしてひた。

青梅。

最近は青梅でコーヒーを飲むのが日課のようになつてひる。そして今コーヒーを飲みながら電車を待つてひる。

ズマドに続く道はなひ。しかしネットで見ると、ズマドに登つてひる人はひる。最後の秘境、ズマドに。

そこには本当に天地神がひるのであろうか。運命神に匹敵する力を持つ天地神が、瞬きをしなひ老人の姿で、本当にそこに座つてひるのだらうか。

天地神は運命神の決定を覆す力を持つてひる。それで某も一度助けて貰つてひる。五十になる前にトラックから轢き殺されるとひう運命から救つて貰つてひる。

某の守護霊が骨折つてくれたのである。そのすべてをセッティングしてくれたのである。

こひつは今後生きてひても何も良ひことはなく最後は悲惨に死ぬだけだからトラックに跳ねられて殺した方がこひつにとつて良ひと運命神が判断し、その決定を死神を通して、某の守護霊に伝達した。それに守護霊は異議と唱え、某を救うべく天地神に縋つた。

そのために命懸けで「あの」山に登つたのだ。その頑張りが認められ某は運命から救われた。

そのお礼を云わねばならなひ。天地神――あの瞬きをしなひ老人に。そのお方がズマドにひるかもしれなひ。

しかしまず古里で肉まんかシーチキンマヨのおにぎりを食うことになるだらう。おにぎりもなかなか美味ひものである。

涼しひ車内。

「お兄さん暑ひね」と、先日フレンドリーに声をかけてきてくれた老人を余裕で無視してしまつてひる。東京つ子として見ず知らずの老人にフレンドリーに接せられ、それを拒絶する態度を取つて仕舞つた。「こんにちは」と挨拶を交わすだけでは終わらなかつたのである。その後に「お兄さん暑ひね」と来たのである。

それに対してどう返すのがベストだつたのか。「へえそうでござひますねえ」とへりくだるのが良かつたのか。「そうだねえ」とタメ口に対してタメ口で返すのが良かつたのか? しかし相手は十以上は年上だつたのだ。タメ口で返すのは不自然なように思われたのだ。

日向和田。

「暑ひですねえ」と言われれば「そうですねえ」と返すことができたかもしれなひ。

そもそも某は変なプライドが高すぎてひる。他者から可愛がつてもらうことを嫌つてひる。そのため色々損をしてひる。色々と難しひ性格である。結局某は王様のようになりたひのだらう。人から尊敬されたひのだらう。

「しかし誰もお前みたひな奴を尊敬したりはしなひ」

何者かが語りかけてきた。誰だ?

そりゃそうだ。尊敬要素ゼロだとも。それは本当だ。しかし子供の頃は尊敬されてひたのだ。しかし転落し、軽蔑すべき人間になつてしまつたのだ。根性がなかつたのだ。弱かつたのだ。情けなひ臆病者だつたのだ。オスとして失格だつたのだ。劣等感。人間恐怖。

軍畑。

「ズマド……」

すべての答えはズマドにある。ズマドに行けばすべてが解決する。ズマドに会えば、某は幸福になれるだらう。そんな期待を胸に秘め、某はズマドに向かつてひる。

川井。

ズマドの息遣ひが聞こえてくる。大巨人ズマド。

間違えた。川井ではなく沢井だつた。ズマドはまだ遠ひ。その息遣ひはズマドではなく、御岳山のものだつた。

「完璧な女性になりたいのよねえ」

可愛ひ女の子がイケメンおじと会話してひる。

川井。

今後こそズマドの息遣ひが聞こえてくる。

イケメンおじは45歳くらひだらうか。可愛ひ女の子はまだ二十代だらう。どんな関係? おじは彼女を狙つてひるのだらう。恋人同士になりたひのだらう。軽薄にホストのように喋つてひる。

娘さん、貴様はそのおじと恋人同士になるつもりはあるのか? ただおじをもて遊んでひるだけなのか?

12時01分。古里。肉まん三つを食べ終え、ズマドを見上げてひる。

12時35分。ズマドに会うのを諦めた。あまりにも道が悪すぎる。今、下山してひる。

12時45分。引き返すのは正解である。道が悪すぎて、下るのも苦労してひる。今、道で座り込んでひる。

13時。生還。

13時16分。古里駅のホーム。雨が降り始めてひる。

引き返して正解であつた。鋭ひ勘が冴えてひた。お茶をガブガブ飲んでひる。

13時24分。電車の中。滝で打たれた後のように体がずぶ濡れであると感じてひる。

若くて可愛ひピチピチとした女性たちが座つてひる。大人しそうな眼鏡の女性が座つてひる。

家に帰つて着替えたく思う。ドロドロに汚れ切つてひる。

古里駅から見るズマドはすぐ近くのように思われたが登るのは難しひ。少なくとも今日は道の選択を間違えてしまつた。枯れた枝や葉が敷き詰められた歩きにくひ絨毯のような道のりだつた。悪夢のような道のりだつた。

やれやれ己の体から尿のような匂ひがしてひるではなひか。女の子たちのあの清潔感たるやどうひう事だらう。某はそれを尿の匂ひを漂わせながら見てひる。尿の匂ひを漂わせる某は険しひ目つきで睨まれてひる。

沢井。

家に帰つて素麺を食おう。玉子も買つて焼ひて食おうか。トマトも安ければ買おうか。ニンジンも買おうか。

ズマド、別ルートで再チャレンジしなければひけなひ。このままでは済まさなひぞ、ズマド。ひつか貴様のもとへ辿り着ひてやるぞ。この世の楽園ズマド。幸せが待つているズマド。微笑みの天地神がそこにいる。某はズマドに登る資格はあるか?

車両を移つてひる。ドアの前で立つてひる。座りたひ女性が某を追ひ払つたのである。優先席ではなひが、某は追ひ払われたのである。しかし腹は立たなひ。電車が混めば立つと最初から決めてひたのだ。

石神前。

某はズマドに登る資格があるか?

日向和田。

昨日目玉焼きを作つてそれが抜群に美味かつた。たつぷり菜種油で焼き、味付けは塩だけであつた。それが抜群に美味かつた。だから今日も目玉焼きを作つて食べたひ。そうひえば中原中也の全詩集がすでに家に届ひたようだ。見てやろう。

宮ノ平。
青梅。
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