小説家志望
投稿日
2024/09/18
もうすぐ電車は動き出しそうに思えていた。
もうすぐお茶も飲み終わりそうだった。
彼はこれから青梅丘陵でハイキングをするつもりであった。
しかしその前に古里駅のセブンイレブンで、何か美味しいものを食べるかもしれなかった。
食べたあと、そのままハイキングをするのはやめておき、真っ直ぐ家に帰る可能性もあった。
どうするのか、彼は確とは、まだ決めていなかった。
彼はだらだらとお茶を飲んでいた。
偉大な小説家たちが、彼に勘違いをさせていた。
偉大な小説家たちが導いてくれた偉大な考えを、彼は自分の頭だけで考え出したと、勘違いしていた。
だから自分も小説家になれるに違いないと思い、彼はながながと、小説家を目指していた。
しかし彼の考えのすべては、実は他の小説家の借り物でしかなかった。
彼は自分の頭では、何一つ新しいものを生み出してはいなかった。
「腹減ってきたなあ……」
電車は宮ノ平駅に到着していたが、彼はそこで下車しなかった。
青梅丘陵でハイキングするなら、そこで下車しなければいけなかった。
しかし彼は、古里駅のセブンイレブンで、何か美味しいものを食べることに決めていた。
それはカレーパンだろうか、おにぎりだろうか、肉まんだろうか。
何を買うのか、まだ決めてはいなかった。
古里駅には、「卵道」というだし巻き玉子の専門店もあるが、だし巻き玉子定食は1200円と、少し高すぎるように思えていた。
そのため彼は、「卵道」でだし巻き玉子を食べるつもりはなかった。
彼は一食に千円以上は使いたくなかった。