登山サークル アウトドアチャイルド

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零円の登山家(4)
投稿日
2024/10/01
夢破れた野獣は、帰路についていた。
そこから家までは、決して、遠くなかった。
家からもっとも近い場所にある、近所の山に、登ろうとしていたのである。
そしてその山に登った経験をもとにして、「零円の登山家」という小説を、作ってみようと思ったのである。
しかしその近所の山に、残念ながら、登れなかった。
だからもう、今回の小説作りは、完全に失敗していた。
その山に登れなかったのだから、彼のやる気はもう、完全に失せていた。
彼は、敗北者の薄笑いを、その表情に浮かべながら、とぼとぼと、家に向かって、歩いていた。
またしても、彼のアイデアは、あっけなく潰れてしまっていた。
まあしかし、これは、よくあることであった。
家に向かって歩いている途中で、目をひくスーパーを見かけた。
彼はそこに立ち寄り、そこで売られているものを、一つ一つ、じっくり眺めた。
そして何も買わずに、そこを後にした。
それからさらに歩くと、早くも、見慣れた場所に出てきた。
そこには見慣れた、「餃子の王将」があった。
そして彼は、いつもの、スーパーオザムに立ち寄った。
そこで、トマトとキャベツを購入した。
そしてまっすぐ、家に帰った。
家に帰ると、まず、ペペロンチーノを、作って食べた。
茹でたパスタに、S&Bのまぜるだけのスパゲッティソースをかけ、よく混ぜて、ペペロンチーノは、完成した。
それから彼は、機械的に、読書をはじめた。
そして、村上春樹の「街とその不確かな壁」を、読み終えた。
それから三島由紀夫の「豊饒の海」を少し読み、さらに夏目漱石の「明暗」を少し読んだ。
さらに、宇佐見りんの「推し、燃ゆ」を、ずっと読み続けた。
「推し、燃ゆ」は、宇佐見りんが21歳で、第164回芥川龍之介賞を受賞した作品であった。
難しい漢字がほとんど出てこない小説であった。
中学生レベルの漢字しか出てこないという印象だった。
内容は、抜群に面白かった。
それは男性アイドルを熱狂的に応援している、少女の物語であった。

(完)
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