登山サークル アウトドアチャイルド

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2013-05-21
投稿日
2024/10/21
Hは最近、朝起きて、散歩に出かける。
途中で買い物して、家に戻ってくると、だいたい一時間半くらい経っている。
あまり近所の人とは顔を合わせたくなかった。
そのため外出には、少しだけ心構えが必要だった。
とにかく誰とも目を合わせない。
散歩のコース中に、挨拶をしてくる年配の人がいた。
それはあまり嬉しくなかったので、Hは散歩コースを変更した。
大学時代、Hは半分引きこもりみたいな状態になっていた時期がある。
東京で一人暮らしをして、大学にも行かず、日が上がっている間は、外出しなかった。
外が暗くなってから、散歩に出かけた。
当時、タバコを吸って、酒も飲んでいた。
いつもタバコを吸い過ぎて、気分が悪くなっていた。
そのたびにタバコをやめようと思うのだけど、時間が経つと、また吸いたくなる。
コンビニに入るのは、精神的に調子が良いときだけであった。
外で歩いていると、だんだんと調子が良くなるのである。
そしてやがて、スーパーやコンビニに入れるくらいに、調子が良くなる。
時には調子が良くならず、そのまま家に帰ることもあった。
そんな時は、嫌な気分になったものである。
昼間などは、アパートの外で、近所の主婦たちが、楽しそうにお喋りをしていることもあった。
そんな中に出ていくことは、当時、絶対に不可能であった。
Hは当時、自分のことを、人の目に触れてはいけない汚い存在のように思っていた。
あれはHが23歳くらいの頃であった。
ファミレスには絶対に入っていけなかった。
そこで食事ができるのは、とても幸福な人たちだと思って、彼は羨ましく思っていた。
当時の彼は、明るいところが苦手であった。
今はもう、そんなことはない。
Hは昼の散歩が好きである。
散歩に出かけると、色々なことを考える。
そして思わぬ発想が生まれたりもする。
外の空気というものは良いものである。
外にいると、世界の全部が、自分の家みたいな気分になる。
アパートの中にいると、自分の部屋は小さなスペースである。
散歩というものは本当に、心と体の健康に良い。
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