七月十九日。十八時一分。
　横尾山荘でカップラーメンを食べ、ビールを飲み、テント泊をしている。
　雨が降っている。
　ここから槍ヶ岳山荘までは、七時間十分。槍ヶ岳山荘から槍ヶ岳山頂までは、三十分。
　明日は朝早く出発して、槍ヶ岳山荘を目指す。十二時くらいには到着するだろう。そして槍ヶ岳山荘でテントを張って、いよいよ槍ヶ岳山頂に登る。
　あるいは槍沢ロッヂで一旦テントを立てて、それから槍ヶ岳に行こうか。あるいは山頂に登ってしまってから、テント地を検討しようか。
　そのときまだ十四時くらいだったら、槍沢ロッヂまで下ってから、テント泊をしても良い。そのほうが三日目が楽になる。三日目に槍ヶ岳山荘から上高地まで一気に下るのは大変だ。それだと八時間くらいはかかる。
　でも八時間程度なら、別に良いのではないか？　早朝五時に出発すれば、十三時には上高地に着く。それでもまったく問題ない。
　ということはやはり、明日は槍ヶ岳山荘でテント泊が良いだろうか。
　後でトイレに行かなければいけない。ビールもお茶も、かなり飲んだ。何度もトイレに行きたくはない。次のトイレを最後にして、あとは朝まで眠りたい。
　雨が降っているので、寒さ対策は重要だ。服や体を極力濡らさないようにしなければいけない。
　明日の天候はどうだろうか。槍ヶ岳に登れるだろうか。
　寒いのでジャンバーを羽織る。
　サンダルを持ってきている。トイレにはサンダルを履いていこう。
　もう一時間もすると、外は暗くなるだろう。ヘッドライトの用意もしておかないと。
　今日は上高地から横尾まで、ザックにザックカバーをつけ、上下のレインコートを着て、歩いた。
　現在十八時二十三分である。二十時くらいにトイレに行けば良いだろう。その後は暖かくして寝る。
　しかし寒い。後でシャツを着替えよう。気をつけないと風邪をひいてしまう。先ほど三百五十ＭＬのビールを飲んだためか、少し熱っぽいような気もする。
　眠くなってきた。トイレにも行きたくなってきた。でももうしばらく我慢しよう。トイレはあと一回だけで済ませたい。その後は朝まで、トイレ無しで寝つづけたい。もう水分は取らないでおこう。
　しかし、トイレに行ってしまった。まだ十九時一分だ。朝までにもう一度、トイレにいかないといけないだろう。
　トイレの前でカップルが料理をしていた。テント泊の人たちだろう。居酒屋みたいにそこに座り込んで、じっくり話し込んでいた。
　迷惑な話である。
　そのカップルの近くを通って、トイレに入る。そのカップルに、トイレの音は丸聞こえだ。
　極力音が出ないように気をつけながら、排便を済ませる。
　トイレに十分くらい入っていたので、排便をした事はバレバレだ。だからトイレから出てくる時は気まずい。
　トイレが終わるまでにカップルが消えていてくれればいいのにと願ったが、しっかりとトイレの前にいた。私がトイレから出てくるのを待っていたかのように、私が出た後、すぐにどこかに消えた。
　登山のときは排便に困る。登山中に排便がしたくなると悪夢なので、なるべく登山前に済ませておきたい。ひとまずこのタイミングで排便を済ませることができた。うまくいけばこの登山中、もうずっと排便は不要かもしれない。
　十九時十五分。だんだん外が暗くなってきた。雨は降り続いている。
　明日もずっと雨だろうか？　雨だとテントを片付けるのも設置するのもやっかいだ。できれば止んでほしい。
　明日の槍ヶ岳登山を阻むもの。それは雨である。
　風も吹くだろうか？　雷は大丈夫だろうか？　気になるところだ。
　電池式の携帯電話の充電器も持ってきている。コンビニで千百円で購入した。問題なく充電ができる。この文章はスマートフォンで書いている。バッテリーは今、六十六％。すでに二回ほど充電した。もう一度充電して、八十％以上にしておこう。