槍ヶ岳へ 十二
投稿日
2024/11/24
JRホリデー快速ビューやまなし号・新宿行は、地獄の電車であった。車内の椅子は、すべて四人がけ。大きなザックを載せれる網棚もない。
だから前の席にザックを置いていたのだが、乗客がだんだんと増えて、ザックで席を一つ占領するのは許されない状況になってきた。だから仕方なく、ザックを膝の上で抱え込んで、前の席を空けた。
しかし、せっかく席を空けてやったというのに、みんな遠慮して、誰もその席には座らない。どうやらザックを抱えている私の姿が、ひどく窮屈そうに見えていたようだ。
だからみんな遠慮して、誰もその席には座らない。車内は満員なのに、私の前の席には誰も座らない。
かなり気まずかった。
新宿まで行く電車である。今後、ますます乗客が増えるかもしれない。
それらもろもろを考えて、いったん大月駅で下りることにした。そして十五分後にくる立川行きの電車に乗り換えることにした。
その選択は正解であった。乗り換えた電車はガラガラ。ゆうゆうと座ることができている。
まったく、変な電車に乗ってしまったものだ。しかしあと二時間以内くらいには、家に着くことができそうだ。
先ほどの電車の中で、しばし寝ていた。
風呂にも入らず、帰路についている。不潔感が気になったが、今ではそんなに気にならない。
仕事のほう、どうしたものか。このままずるずると続けるべきか。いったんバチっと辞めてしまうべきか。
仕事をさぼって槍ヶ岳に登りに行ったのである。もう答えは出ているのではないか。辞めたほうが良いのではないか。
どうしても仕事にならない気がする。このままずるずる続けていてもしょうがない気がする。
S社長に送るメールの内容を考える。
「お世話になっております。窓口、かなりご負担のようですが、八月以降の契約は、いかがいたしますか?
S様が窓口を担当していただけないのであれば、こちらとしては、難しいと思っております。
伝達、真面目にする気、無いですよね? 伝達は仕事の命です。でも、やる気ないですよね?
だから私、終了でいいですか?
なんかもうあなたとは関わりたくないのです。だって伝達する気、無いじゃないですか?
仕方がないですよね。しょうがないですよね。
あなたは全然誠実ではないですよね? ちゃらんぽらんですよね?
すごく面倒くさいです。
すみません、実は今月は、かなりさぼりました。さぼって登山に行きました。
誠に申し訳ありません。私は給料泥棒です。
もうあまりお役には立てないような気がします。」
(完)